スノーボードギア総合ブランドとしてはバートンの次に人気のあるサロモン。バートンと比較すると価格の抑えられているモデルが多く、こちらなら手が出せるというユーザーも多い。元々はスキー製品を扱っていた老舗メーカーということもあって、技術力と品質面では十分信頼できるメーカーである。
ここでは、サロモンのブランド背景と今期の板でおすすめのモデルを中心に解説する。
目次
1.SALOMONについて
サロモンは1947年に創業したフランスのメーカー。当時農家だったフランソワ・サロモンと妻のジェニー息子のジョージによって始められた。創業当初はスキーのエッジを作る加工業者であったが、マーケットが非常に小さくそれだけで運営することは難しかった。
そこで、次の製品を考えていた彼らはスキービンディングを開発する。1955年に「Skade」という名前で最初に発表されたビンディングはつま先部分をはめ込んで固定できるものだった。2年後の1957年、「Lift」という名前でさらにかかと部分をケーブルで固定するタイプのビンディングを発表。そのころにはエッジ製作が自動化できるようになっていたが、次第にエッジ製作からは手を引いていくことになる。
1966年にはステップインタイプのビンディングを発表。同年に開催されたオリンピックで使用されている。1972年にはスキービンディングメーカーとして世界一の販売数になる。1970年代後半からはブーツの開発にも取り組み、1990年にスキー板も販売を開始する。
スノーボード製品を発表したのは1997年からで、スキー用品で培った技術を活かして、板、ビンディング、ブーツを同時に発売している。それと同時にアディダスに買収されアディダス-サロモングループとなる。
更に2005年からはフィンランドのスポーツ用品メーカー、アメアスポーツコーポレーションに売却され現在はアメアの傘下となっている。
2.主要モデル紹介
サロモンのラインナップもバートン同様大量にあるので、すべては紹介しきれないのだが、主要なモデルを紹介する。
ちなみに現在サロモンのラインナップに純粋なロッカーボード、ダブルキャンバーボードは存在しない。基本構造をキャンバー形状とするモデルラインナップとなっている。
2-1.ASSASSIN
サロモンのスノーボードで定番となっているモデル。ディレクショナルツイン形状で基本的にはフリースタイル向けにデザインされているが、カービングやパウダーまで幅広く対応できるオールラウンドモデル。
板の形状はサロモンのボードで一番多くのモデルに採用されているRock Out Camberというもの。
Rock Out Camber
サロモン曰く、板の中心部分をフラットにすることで耐久性を高め、脚力の伝えやすい足下部分をキャンバーにすることで反応性や反発力を上げ、ビンディングの外側を丸みの帯びたロッカーにすることでプレスがしやすくなっているとのこと。個人的には中心部分のフラットはそれほど効果があるのか疑問なのだが、耐久性以外にも通常のキャンバーよりやわらかく扱いやすいというメリットはあるだろう。
また、Popster Eco Boosterという構造が入っている。サロモンがPopster構造と呼ぶ構造は、板を部分的に薄く、部分的に厚くすることでオーリー時の反発力を上げるというもの。サロモンは、かなり昔からこの構造を取り入れているが、板の厚みを部分的に変化させるという構造は近年では一般的になっている。
Popster
Popsterの構造に加えて、ノーズとテールに放射状にカーボンファイバーを入れ込み、さらに反発力や反応性を上げたものがPopster Boosterである。
Popster Booster
ASSASSINに取り入れられているPopster Eco Boosterは、Popster Boosterに加えて、ノーズ、テールに帯状の竹を入れることで、さらに軽く自然な反発力を得られるようにした構造である。
Popster Eco Booster
エッジの仕上げはAll Mountain Edge Bevelというものになっている。これはビンディング間のエッジは2度、有効エッジ部分は1度角度を緩くし、どんなコンディション、どんなプレースタイルにも対応できるエッジ処理。
最後にソールの種類だが、Sintered EGというものである。ソールは通常材料となる樹脂の成型方法によってシンタードとエクスクルーデッドの2種類に分かれる。シンタードは高密度になる圧縮成型方法で滑りを良くすることができるが、手入れを怠るとすぐに滑らなくなってしまう。一方エクスクルーデッドは通常の金型成形で手入れに気を遣わなくてもそこそこ滑る板になる。ASSASSINのソールはシンタードが基本構造なのだが、ガリウム補強加工によって衝撃耐久性を増し、エクストラ仕上げで瞬発力を上げているものである。
2-2.ASSASSIN PRO
ASSASINと基本的な形状は同じで、さらに軽量かつアグレッシブな動き実現するのがASSASSIN PRO。一番決定的な違いはコア材である。ASSASSIN PROのコア材はGhost Green Coreというもので、超軽量なキリ材を最大限に使用し軽量化と反発力を高めている。サロモンのボードでは、非常に軽量でポップなランクの高いものである。
また、カーボン素材がボード全体に入っており、反応性と衝撃吸収性を向上している。
2-3.CRAFT
CRAFTはASSASSINよりもよりフリースタイル向けとなっているソフトフレックスのオールラウンドモデル。ベース形状はASSASSINと全く同じで、Rock Out Camber。ただし、ツインシェイプ形状となっている。
コアとしてはPopsterが採用されているため、価格も若干抑えられている。
また、エッジ処理が、Freestyle Edge Bevelというものとなっている。これは、ビンディング間のエッジは3度、有効エッジ部分は2度角度を緩くするというエッジ処理。逆エッジのリスクも減るためフリースタイル用の板にはぜひ欲しい仕上げだが、カービング性能が悪くなるというデメリットもある。
その他、衝撃吸収用のラバーが全体であったものから部分的なものに変わっている点や最終的なソール仕上げが違う点など細かい違いはあるのだが、大きく滑りに影響はしてこないだろう。
2-4.ULTIMATE RIDE
どんな環境でも対応できるようにつくられた、サロモンのハイエンドモデルのひとつ。オールマウンテンタイプに分類されているが、ハードフレックスなためどちらかと言えばカービング、フリーライド、ハーフパイプをプレーするユーザー向けになる。
ベースはQuad Camberと呼ぶ形状になっている。両足下の設置点のみわずかに丸みを帯びたロッカー形状になっており、パウダー時の浮力が向上している。またそこから中心に行くまでのキャンバーを強くして反発力も高めている。
Quad Camber
コア材もASSASSIN PROと同様のGhost Green Coreタイプでサロモンの最高峰のもの。また、Popster形状に加えてGhost Carbon Beamと呼ぶ4本のカーボンファイバーが入っており、最大限の反発力と高速安定性を実現している。
Ghost Carbon Beam
ソールの仕上げは、シンタード素材に加えてArea51という特別に選ばれたワックス加工を専門の工場で施すもの。高い滑走性能を長時間維持できるようになっている。
2-5.XLT
ULTIMATE RIDEよりもフリーライド向けになっているモデルがXLT。価格帯はほぼ同様で、フレックスもQuad Camber形状も同様だがディレクショナルツインになっておりノーズのほうが少し長い。
一番の特徴はコア材。Ghost XLT Coreというもので、手で厳選された軽量のアスペン材にハニカム化(六角形化)された桐のストライプを組み合わせている。超軽量/高反発/高コントロールを実現しているコアである。また、カーボンファイバーもノーズからテールにかけて2本入っており、滑走時の安定性を向上させている。
Ghost Carbon Stringer
どんなコンディションでも、快適なライディングが可能。エッジの食いつきも良いので、鋭いターンを楽しみたいユーザーにもおすすめのモデル。
2-6.SICK STICK
SICK STICKのオリジナルコンセプトは「バックカントリーの中でフリースタイできる」というもの。パウダーライディングの楽しさとフリースタイルとしての自由度を両立している。
プロファイルはRock Out Camberとなっており、外側のロッカー形状がパウダー時の浮力を高める。また、Tapered Twin形状を採用しており、ノーズよりもテール側のほうが少しだけ幅が細くなっている。バックカントリーやフリーライド用によくある形状で、ターンのキレが上がる(スイッチの時は逆効果)。
ノーズとテールでエンド部分の形状が異なり、見た目もオシャレ。フレックスは比較的硬めとなっている。
2-7.SIGHT
サロモンのラインナップで初心者中級者におすすめな低価格帯でおすすめなのがSIGHT。やわらかめのフレックスを持っており乗りやすく、シェイプはボードの基本でもあるディレクショナルツイン。
形状がRock Out Camberと似ているCross Profileとなっており、純粋なキャンバーよりもパウダー時の浮力などを楽しめる。非常にバランスが良く乗りやすい板だろう。
Cross Profle
3.最後に
サロモンのラインナップを紹介してきたが、ブランドの印象としてはバートンよりも少し価格が安く硬めでフリーライド寄りのモデルが得意というイメージを受ける。ユニークな点は数年前からよくアピールしているPopster構造をベースとした技術と、部分的に竹を使用しているという点。どちらも軽量でポップな乗り心地を楽しめる。カーボンファイバーを使用した技術も力を入れている印象がある。
ブランドの規模から考えると非常に多くの技術を開発していろいろなユースケースに合わせたモデルを出していそうだと思われるが、案外思ったほど多くの技術ポイントを出しているわけではない。ハイエンドモデル、ローエンドモデルが比較的はっきり分かれているので最低限フリーライドタイプ、フリースタイルタイプ、バックカントリータイプなどざっくりとほしいタイプを決めておけば、あとは予算の許す限り高いものを買っておけば間違いはないだろう。