FLUXはスノーボードビンディングで人気のブランド。どれも細かく調整できるようにつくられているのだが、板とビンディングをセットで購入した場合、多くはショップが未調整のデフォルト状態で角度だけ決めて取り付けるため、うまく使われていないケースも多い。
というわけで、人気のDSを例にしてFLUXのビンディングのセッティングに関して記載してみよう。
1.FLUXビンディング
FLUXは日本が世界に誇るビンディングブランド。UNION、BURTONを含めた3社で日本でのシェアのほとんどを占めている。
特に、DSはFLUXの中でもやわらかめのフレックスを持っており、使いやすく、代表的ともいえるモデルである。2018-2019モデルよりフルモデルチェンジし、ハイバック形状が変更されているが、FLUXのラインナップ上の位置づけは同様である。
今回はすでに板に取り付いている2016モデルのDSを外して、各部を調整する。ハイバックの形状は現行モデルと異なるが、調整方法は同様である。
2.フットベッドの調整
取り外したら、まず行うべきなのがフットベッドの調整。
FLUXのビンディングはフットベッドを構成しているトゥクッションとヒールクッションを(というよりベースプレートサイズ自体を)ブーツサイズに合わせて調整することができる。これはブーツからの力の伝達を効率的にするので、必ずやっておいた方が良いのだが、やっている人が意外に少ない。
下図で黄色の丸の部分が爪になっているので、外しながら矢印方向に引っ張る。出しすぎるとボードからはみ出てしまうので、自分のボードと合わせてみて、はみ出ない程度に出す。
今回、ヒール側は最大まで、トゥ側は1メモリ分引き出した。
ブーツとクッションの接地面が増えて力の伝達効率が上がる
2.ストラップの調整
次にストラップを調整する。
トゥストラップはバンド根元の位置が2か所用意されており、好みに合わせて調整できる。ビンディングを取り外したら、トゥストラップを下方向に引き下げると外れる。デフォルトでは手前側についているはずだが、つま先側に移動させてもよい。
FLUXのストラップはF.T.M. Versaと呼ばれつま先側と足の甲側好きな方で固定することができる。
あくまで傾向で、ブーツにもよるが、つま先で止める際はストラップバンド付け根は手前側、甲で止める際はバンド付け根はつま先側の方がホールド性能はよくなるだろう。
アンクルストラップ側も付け根を2か所から選択できるようになっている。下図のつまみを立てて回すと調整が可能。裏側も同様。こちらもブーツと合わせてホールド感の高い方を選ぼう。
あとは、ストラップセンターの位置調整。下図DEELUXEのブーツでは、センターが左にずれている。
バントとのつなぎ目のつまみを起こして回せば取り外せるので、トゥ側、アンクル側それぞれ1穴分伸ばすと、センターに合う状態となった。
3.ハイバックの調整
今回、必要なかったため実施していないが、ハイバックを調整することもできる。
まずはハイバックの位置。ローテーションの調整という。
サイドについているつまみを、立てて回すことでハイバックが外れる。デフォルトではセンターに取り付いているが、右寄り、左寄りに付け替えることが可能。
これはどういうことかというと、通常、多くのユーザーはビンディングを板に取り付ける際に角度をつける。ハイバックを使う動作で最も頻繁に行われるのはヒール側のターンだが、その際にビンディングのセンターにハイバックがあるよりも、エッジに対して平行になるようにハイバックがある方が、ヒールサイドへの力の伝達効率が上がり、レスポンスが向上する。
では、今回、なぜ筆者がこの調整を実施しなかったかというと、これはあくまでターン性能を重視する際のセッティングのため。筆者はパークやグラトリもかなり行うが、そうしたトリックの際には必ずしもエッジ方向に対してのみ力を加えるわけではなく、ボード全体をスピンさせたりねじったりといった動作が多くなる。そのときはむしろビンディングのセンターになるようにハイバックがついていた方が扱いやすいこともあるため、今回は調整していない。
ビンディングセンターに合わせたハイバック(上図)とエッジに平行になるように合わせたハイバック(下図)のイメージ。左のビンディングが異なり、ターン性能を重視するなら下図のセッティングのほうがメリットが多い。
カービング、フリーライド志向のプレーヤーはローテーション調整をした方が良いだろう。
次にハイバック角度。他ブランドのビンディングでもほぼ必ずある調整機構なので知っている人も多い。
FLUXのビンディングはマイクロアジャスターという機構が備わっており、DSはこれによってハイバック角度を調整する。
ハイバック付け根の内側部分にメモリがふってあり、この数値を大きくするとハイバックの角度が倒れる。調整する際はビンディング外側のつまみを緩める。
ハイバックの角度を倒した時のメリットは、やはりヒール側のターンのレスポンス改善。倒した方がクイックで鋭いターン性能が期待できる。しかし、こちらもパークやグラトリ志向のプレーヤーにとっては足の自由度が低くなるので、最も立っているデフォルト設定のままでよいだろう。
また、DSにはついていないが、モデルによってはハイバック外側につまみがついており、より細かく角度調整ができるものもある。
4.カスタムスタビライザーの取り付け
FLUXビンディングでDSやTMといったモデルを購入したユーザーは、カスタムスタビライザーというパーツが付属してくる。下図のようなパーツでDSの場合はゴムのような反発を持っているソフトフレックスタイプなのだが、このパーツ、カタログにも記載がないし取説にもどのような効果があるのかほとんど情報がないという謎のパーツ。
取り付ける場合はビンディング裏のヒール側両端に埋め込む穴が開いているので差し込むことになる。パーツは左右、外側内側それぞれ別形状になっておりどの位置かは表面に記載されている。
筆者が実際に取り付けた際に感じた効果はこうである。
まず、ゴム状のパーツをビンディング裏に取り付けることになるので、板とビンディングの接触点が変わってくる。ビンディングの外側にあたるこの位置が板と強く接触するようになるので、板の操作性が向上する。より具体的に言うと、特にプレスやオーリー、ノーリーといった板の前後方向に加わる力の伝達効率が上がり、より大きな反発力などを引き出すことができる。
また、スタビライザー自体にやわらかさがあるためビンディングと板の固定感が和らぐ。これは、よく言えば自由度が上がりより柔軟性の高いプレースタイルが可能でクッション性能も上がる。しかし、悪く言えば板からのクイックなレスポンスが得られにくくなり、また、高速滑走時に板のバタつきが大きくなる。
TMに付属しているスタビライザーの場合はハードフレックスとなっているので、DSのものよりもやわらかさによるメリット、デメリットは出にくいだろう。
結局つけるべきかつけないべきかというと、フリースタイル志向のプレーヤーはつけるのがおすすめ、ライディング志向のプレーヤーはつけないのがおすすめである。
5.ビンディングの取り付けとフットベッドスペーサーの取り付け
これで、一通りの調整は完了。ビンディングを板へと取り付ける。取り付け方は上でも記載した下記リンクを参照してもらいたい。
板を取り付けた後、2.でフットベッド位置を調整している場合は下図のようにフットベッド爪の横に隙間ができている。
FLUXにはスタビライザーの他にフットベッドスペーサーというパーツが付属しており、これを使用してこの隙間を埋める。シールになっているのでちょうど良い幅のものを貼り付ければよい。
こんな感じでちょうど隙間が埋まった
6.まとめ
以上でFLUXの調整は完了。細かい部分は異なるが、他ブランドも調整機構は似通っているため、大部分はビンディングを外してみて、この記事を参考にすればわかるだろう。
余談であるが、ビンディング調整やスタンス幅の決定、スタンス角度の決定というのは、実はなかなか影響が大きい。例えば、板が硬いと感じた際に多くのユーザーは「もっとやわらかい板を購入したい(購入すればよかった)」と考えるのだが、両足間のスタンス幅を左右ほんの5mmずつ狭くすることで解決できることも多い。スタンス幅を狭くするとノーズ、テールの長さは実質長くなるが、ここが長いほど板はしならせやすく、板が本来持っている反発力を引き出しやすくなる。
板とビンディングをセットで購入するとショップで取り付けてもらえるが、こうした細かい調整までは、普通は指示しなければやってくれないので、最終的には自分で調整できるスキルが必要になってくる。その際、「どこを、どう変えると、どのように滑りに影響するか」ということを理解する助けとして、本記事を参考にしてもらえるとありがたい。
コメント
こんにちは。当方ビギナーで初ビンディングにFLUXを迎えましたが、調整とかあるのかなあと思い検索してこちらの記事を読ませていただきました。細かい仕組みの説明や写真付きで解りやすく、よく理解しながら調整を行う事ができました!
今後もメンテ等で記事を参考にさせていただきます。ありがとうございました。
もといあ さん
コメント、ありがとうございます。
今後とも、役立つ情報を可能な限りわかりやすく発信していこうと思っております。
よろしくお願いします。