スノーボードが日本に普及しはじめてから、すでに30年以上が経過しているが、時代とともに様々な遊び方が考案され、現在では板の種類も非常に多岐にわたる。
この記事では、スノーボードのプレースタイルと、それぞれのスタイルに適した板の構造に関してまとめる。自身の板選びの参考にしてもらいたい。
目次
0.はじめに
この記事でまとめるプレースタイルは、オリンピック、ワールドカップの競技種目、各ボードメーカーが提供しているカタログ上の記載、日本および国外のスノーボードマガジンにおける記載から総合的に考えた分類方法で分かれている。
実際、ボードメーカーによっては、非常に細かくプレースタイルを分類して、板の特徴と適したユーザーを最大限に伝えようとしているところもある。細かく分けるときりがないため、ある程度同じものはまとめている。
また、新しいプレースタイルの中には、まだ共通認識が浸透しておらず、同じ単語でも、違う意味で使用されるということがよくある。この記事では、そうした注意点も記載しているが、今後、単語の意味が変わってくるという可能性も十分にある。重要なのは、使用している人が、どのようなプレーを想定してその単語を使用しているかという点なので、まずは、現在どのような遊び方があるかという点を抑えてもらいたい。
それぞれのスタイルに適した板に関しては、オールマウンテン用の板を基準にして相対的にどのようなものであるべきかという点を記載している。
1.キッカー、ハーフパイプ(ジャンプ系)
キッカーというのはいわゆるジャンプ台のこと。ジャンプ系のプレースタイルカテゴリである。
近年、オリンピックにもビッグエア、スロープスタイルなど、ジャンプに関する競技が取り入れられたため、広く認知されていることと思う。また、ハーフパイプは以前から日本人選手が強いということもあり、より認知度が高い。
キッカー系をメインにするプレースタイルの場合、板はある程度固めのフレックスを持っていた方が着地の安定性が増す。プロファイルはしっかりとオーリーで高さが出せるようにキャンバーボードの方が適している。シェイプに関しては、トリックの幅を広げようと思うとツイン形状が適しているように思えるが、実際、プロの選手ではディレクショナルツインを使用している場合も多い。
2.パーク、ジブ
大きなゲレンデにはパークゾーンというのが設けられていることが多い。パークゾーンにはボックス、レールなどのアイテムが設置されているが、これら人工物を使用してトリックを行うスタイルがパーク、ジブ系である。
正確にはジブという単語がこうしたプレースタイルを指すため、ジブ系というほうが正しいがパーク系と呼ばれることもあるため、このような記載としている。ただし、パーク系と言う時でも、パークの中にあるキッカーは含んでいないことが多いため注意。ゲレンデ以外の公園などにある手すり、屋根や壁などを使ったストリート系トリックもジブに含まれるスタイルである。
このスタイルで適した板は、柔軟なトリックに対応できるように、やわらかめのフレックスのものとなる。プロファイルはキャンバー形状の他、ロッカーやフラット形状など幅広く使用されている。シェイプは、スイッチスタンスでの操作性も考え、ツイン形状が適している。
また、トリック時の板の取り回し性をよくするため、ボードの長さは、自身の標準サイズより若干短めのものが良いとされている。
3.グランドトリック
グランドトリック(グラトリ)は、キッカーやアイテムなどを使用せず、通常の斜面でトリックを行うというプレー。キッカーやジブと比べると、プレーできる場所が多い、ケガのリスクが低いなどの利点があり、初心者でも気軽に始められる。若者を中心に、非常に人気のプレースタイルである。
このスタイルをメインにする場合、適切な板はジブ用のものと似ている。やわらかめ、ツイン形状、短めの長さのものが適している。
ただし、グランドトリックでも、プレースタイルは細かく分けると複数ある。プレス系のトリックをメインに行うプレーヤーの場合には、プロファイルはロッカーや、フラット形状の方が、スタイルを出しやすい。オーリーやノーリーを使用した、スピン系をメインで行う場合には、キャンバー形状かつ、少し硬めの板の方が、高さが出しやすい。
自身のスタイルに合わせて、微妙に適した板が異なってくる。
4.カービング
カービングスタイルは、圧雪された雪の上をキレのあるターンで滑っていくことを楽しむもの。純粋に”滑る”という行為を楽しむスタイルとも言える。大回転や、ダウンヒルといったような、昔から存在する競技種目もカービングスタイルに分類できる。
カービングプレイヤーに向いている板は、硬めのフレックス、安定感のあるキャンバー形状、シェイプはディレクショナル形状が良いとされる。硬めのフレックスは、高速滑走に板のバタつきを抑える効果がある。また、ディレクショナルの方が適しているのは、ターンをする際にノーズが長すぎると、ノーズ側がスライドしやすくなってしまうなどの理由から来る。また、高速滑走時の安定性向上のため、カービングスタイルの板は、他のスタイルと比較して多少長めのものが良い。
このスタイルの用具は、通常のスノーボードの他にアルペンボードと呼ばれる、非常に硬い特殊なものが存在する。アルペンボードは上記の特徴をより極端にしたものといえるが、ビンディングもブーツも通常のスノーボード用とは異なっている。スキーのようなハードブーツという点が特徴的である。
5.パウダー、バックカントリー
パウダースタイルは、その名の通り非圧雪のようなパウダースノーを楽しむスタイルである。特に海外で人気が高い。バックカントリーはスキー場ではなく、自然の雪山をハイクアップやヘリコプターで登って滑り降りるプレーである。危険が伴うので本格的なバックカントリーをアマチュアで行う人は少ないが、スキー場の中にはコース外の滑走を許可しているところもあり、似たようなプレーを楽しむこともできる。
このスタイルに適した板は、とにかくディレクショナルな形状といえる。ノーズ側を長く、幅のある形状にすることによって、滑り降りる際ノーズに当たるパウダースノーの量を多くする。すると、ノーズを中心に浮力が生まれ、サーフィンを楽しむかのような体験ができる。パウダースタイルの醍醐味はこうしたところにあり、近年はサーフィンボードのようなスティック形状をしたボードも多数出てきている。
6.フリーライド
フリーライドという単語は、近年非常に耳にすることが多くなっているのだが、実は共通の定義がない困った単語である。
自然地形の中、コース取りを自分で決め、ジャンプやトリックをしながら、流動的に滑り下りてくるというバックカントリーに近いスタイルを指す(実際に国際競技がある)こともあれば、圧雪バーンの中、キレのあるターンをきめて滑るという、カービングのことを指して使用されることもある。
ただ、いろいろな文献に共通して言えるのは、フリーライドは高い技術でコントロールされた滑りを楽しむという要素を含んでいる。そこで、基本的には、どのような地形でも、きれいなターンやコントロールされた滑りを楽しむというスタイルといえるだろう。
スタイルの幅が広いので、適した板もいろいろ出てくるが、基本的には、カービングと同様の特徴を持つ板が適している。硬めのフレックス、安定感のあるキャンバー形状、シェイプはディレクショナル形状で少し長めのものが良い。
7.「フリースタイル」という単語に関して
フリーライドと対比されるようにフリースタイルという単語をよく聞くので、この単語に関しても少し触れよう。フリースタイルは、カービングのような純粋な滑りを楽しむプレー以外の総称である。なので、パーク、ジブ、グランドトリック、キッカーといったプレーすべてがフリースタイルの一部と分類できる。
メーカーやショップはよく、「フリースタイル向き!」といったような文言を一部のモデルに使用するのだが、上で記載したように、フリースタイルでもどのようなプレーをするかによって、適した板は異なってくるので注意したい。
8.まとめ
今回はスノーボードのプレースタイルと、それぞれのスタイルに適した板に関してまとめた。
近年は、新しい遊び方のようなものが次々出てくるので、既存のスタイルで分類できないプレーもある。例えば、最近の流行りに「カービングトリック」というスピード感のあるターンの合間に技を入れる遊びがある。リバースターンなどはカービングトリックの代名詞とも言えるかもしれない。こうしたものはカービングスタイルでもあり、グランドトリックでもある。
板を選ぶ際に重要なのは、自分がどういうプレーを目指したいか決めておき、各板が持つ特徴がそれにあっているかどうかという点である。そういった視点で板を選ぶと、もう一段回上の板選びができるであろう。