ウチの実家には年末恒例行事として餅つきをやる習慣がある。もう、数十年以上やっている伝統行事であり、筆者も物心ついた時にはもう餅をついていた。
昔はどこの家でも年末に餅つきを行っていたそうだが、近年都会にいると餅をつく習慣がない人のほうが圧倒的に多いので、地方と都会とで文化の違いも感じる。
せっかくの機会なので、我が家の餅つきのやり方を記載しておこう。
1.餅つきの意味
まず、年末の餅つきにはどんな意味があるのかというところから把握しておきたい。
餅つきや餅を食べるという行為自体は、年末以外でも祝い事の行事として行われる。餅は神様にお供えして、縁起の良い儀式に用いる特別な食べ物という風習が古くからあるため、めでたい節目のタイミングで餅つきという行為が行われることもある。
しかし、年末にお供えする「鏡餅」には年末ならではの理由がある。
鏡は古来より霊力が宿る神聖なものとされているが、鏡餅はその鏡を模して円形の形状にする。現在では2段にしたり、みかんを乗せたりといった姿を想像するが、昔はただの円形の1段餅が鏡餅であった。
神聖な鏡を模した鏡餅を年末にお供えすることによって、年が明けた際、年神様が鏡餅に宿るとされ、それを家族で分け合って食べることで年神様のめでたい力を分けてもらえるという由来がある。
年末の餅つきはそのための「鏡餅」を作る行事である。
ちなみに、最近は年が明けてから、「新年おめでという!」といって、TV番組や百貨店などで餅つきイベントが行われているため、餅つきは年が明けてから行うものだと思っている人がいるが、本来年末の行事である。
2.必要な道具
・臼
筆者の家の臼は15年ほど前に室蘭市の木材屋で売っていた¥80,000程度のものを買ってきたのだが、現在はAmazonでも臼が売っている。サイズを考えると少なくとも3升以上のものを選びたいが、みかげ石でできたものが安価。
杵はしっかりとした餅をつくために重さのある本格的なものを選びたい。ウチの杵は祖父の代から受け継がれているものなので、おそらく50年以上経っているもの。良いものを購入して、保存状態も良ければこれぐらい長期間使用することもできる。
・もち米ふかし器(蒸し器)
もち米をふかす(蒸す)ためのセイロのようなもの。セイロでも代用できるが多少もち米に香りがつくかもしれない。
・ふかし布
ふかし器に米がくっつかないように敷いておく布。薄くて大きい布なら何でも良いのだが、無い場合は絶対に購入したほうが良い。
3.餅つきの手順
餅つきの手順自体はそれほど複雑ではないので、すぐに頭に入るだろう。
まず前日の晩にもち米をとぎ、といだ米を水に浸けてうるかしておく。これをやらないとできあがった餅が固くなってしまうため、1晩は浸けておきたい。
前日の準備はこれだけ。
当日我が家では、米をふかす工程から外の車庫でやる。吹かし器には前日うるかしておいたもち米がそれぞれ2升(3kg)ずつ入っている。一番下の鍋には水がたっぷりと入っており、その下はガスコンロ。ガズボンベに繋がっている。
だいたい20分から30分以上ふかすと、もち米がやわらかくなっているのでつける状態になる。ふかす工程はわざわざ外でやる必要はなく、自宅のキッチンでやっても問題ない。
ふかし終わったもち米は臼に上げる。この時にふかし布がないとふかし器側に米が残ってきれいにできない。
臼に上がったら、まずは杵を使ってもち米をこねる。いきなりつき始めてしまうと、米が周囲に飛び散ってしまうので、ここである程度の塊になるくらいこねておく。
塊になってきたら最後はいわゆる餅つきの工程。つき手は臼の真ん中を狙って杵の重みを上手く使い餅をつく。真ん中から外れると臼も杵も傷んで木の破片が餅に入るので、外さないようにする。
餅を回してまんべんなく粒の無い状態にするのはあいどり側の役割。まだ粒の残っている部分をタイミングよく真ん中へと持ってくる。手はもちろんだが、頭も打たれないように注意すること!
できあがった餅はお盆などに乗せる。粘るし、重いし、熱いしで取るのにコツがいるのだが、素早く1か所に集めて思いきり持ち上げるようにする。
何臼もつく場合はそのまま次の米を臼に上げる。だいたい、1臼ついている間に次の分はふかし上がっている。
無事につき終わったら、臼と杵をきれいに洗って、乾かしておく。米が残っていたりすると、用具にカビが生えたり虫に食われたりといった原因になるので、手間はかかるが念入りに洗っておくこと。
つきあがった餅の保管に関してだが、その場で食べる分は別にいいとして、余った分はまずラップに包んでおく。
2日経つと餅が固くなり包丁で切れるようになるので、そうなったら食べる分を切って加熱するとまたやわらかくなる。数日以上残るようならカビが生えるので、冷凍保存が基本。